ネイルサロンの利益が残らない理由|経費・人件費・稼働率で見直す
ネイルサロンの売上はあるのに利益が残らない、手元にお金が残らないときに、材料費・家賃・人件費・広告費・決済手数料を売上から1つずつ引く記入表と、黒字に必要な来店数の計算式、固定費→稼働率→人件費→単価の直す順番を解説します。
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ネイルサロンの利益が残らないのは、売上が足りないからとは限りません。多くの場合、売上から引かれる費目のどれかが、売上より先に増えています。まず費目を1つずつ売上から引き、「いくら残るか」を書き出します。次に、黒字に必要な来店数を計算し、今の予約枠で届くかを確かめます。直す順番は、固定費の点検、稼働率、人件費の組み方、単価です。
売上側の原因(客数・客単価・来店頻度)は売上が伸びない原因と3つの数字で扱いました。この記事はその反対側、「売上から何が引かれて消えているか」を扱います。
この記事が向いている人:月の売上は数十万円以上あるのに、通帳を見ると働いた割に残らない1〜2店舗のオーナー。スタッフを雇ってから利益が減った方。 向いていない人:これから開業する方(開業資金や物件選びは扱いません)、売上そのものが立っていない方(先に売上側の記事をご覧ください)。
ネイルサロンの利益は、売上から何が引かれて残るのか?
利益とは、売上から費用を引いた残りです。日本政策金融公庫の美容業向け「創業の手引」では、利益を「売上高−売上原価−経費」と置き、経費を「人件費」「家賃」「支払利息」「その他」に分けています。
ネイルサロンに置き換えると、引かれるものは次の2種類です。
- 変動費:売上や来店数に比例して増える費用です。材料費・消耗品、歩合給、カードやQRの決済手数料、クーポンや初回割引の値引き分が入ります。
- 固定費:お客様が来ても来なくてもかかる費用です。家賃、スタッフの固定給と社会保険料、予約システムや媒体の月額、広告費、水道光熱費、リース料、借入の利息が入ります。
同じ手引では、「創業後、意外と経費がかかったという声がよく聞かれます」と書かれています。開業から数年たった店でも、同じことは起こりえます。媒体のプランを上げた、スタッフを1人増やした、キャッシュレス払いのお客様が増えた。1つずつは小さな変化でも、重なると利益が消えます。
売上から費目を1つずつ引くと、いくら残るか?
先月の数字で、次の表を上から順に埋めます。「残る額」の列は、1つ上の残る額からその行の金額を引いた数字です。会計ソフト、通帳、カードの明細、予約システムの請求書を手元に置いて書き出します。
| 費目(出し方) | 月額 | 売上に対する割合 | 引いた後に残る額 |
|---|---|---|---|
| 売上 施術+店販。定価ではなく値引き後の、お客様が実際に払った額(決済手数料を引く前) |
100% | ||
| 材料費・消耗品 ジェル・パーツ・ファイル・衛生用品 |
|||
| 決済手数料 カード・QR・予約サイト経由の手数料 |
|||
| 歩合給 売上や指名に応じて払う分 |
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| 家賃・共益費 | |||
| 固定給・社会保険料 オーナー以外のスタッフ分 |
|||
| 予約システム・媒体の月額 | |||
| 広告費 単発の広告・SNS広告・チラシ |
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| 水道光熱・通信 | |||
| リース・その他 機材・研修・税理士報酬など(年額÷12) |
|||
| 支払利息 | |||
| ここまでが帳簿上の利益 | |||
| 借入金の元金返済 | |||
| オーナーの生活費・取り分 | |||
| 手元に残る額 |
書き終えたら、次の3点を見ます。
- 割合が大きい費目の上位3つ:金額の大きさではなく、売上に対する割合で比べます。下げる対象はこの3つから選びます。
- 値引き分を売上から引いているか:初回クーポンで下げた分は見えにくい費用です。「売上」を定価で数えていると、利益が実際より大きく見えます。
- 前年の同じ月と比べて増えた費目:売上より先に増えた費目が、利益を削った原因の候補です。
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帳簿では黒字なのに、通帳にお金が残らないのはなぜ?
表の「帳簿上の利益」より下の2行が原因であることが多いです。
借入金の元金の返済は、帳簿の経費には出てきません。帳簿では黒字でも、返済の分だけ通帳のお金は減ります。日本政策金融公庫の手引でも、返済の財源は「減価償却費+当期利益」で求め、そこから借入金の返済元金を引き、個人企業の場合はさらに家計費を引いて収支を見る形になっています。
減価償却とは、機材や内装など長く使うものの購入額を、何年かに分けて経費にする考え方です。購入した月にお金は出ていきますが、経費は数年に分けて計上されるため、帳簿の利益と通帳の残高がずれます。
もう1つは、オーナー自身の取り分です。個人事業の場合、オーナーの生活費は経費に入りません。オーナーが毎日施術しているのに、取り分を引く前の数字を「利益」と呼んでいると、店の実態より良く見えます。表では、オーナーの生活費を最後に引いて「手元に残る額」を出してください。
税金や社会保険料の支払い時期によっても、月ごとの残高は大きく動きます。帳簿のつけ方や税金・社会保険の扱いは、店の形態や契約によって異なります。社会保険労務士・税理士・弁護士などの専門家に確認してください。
黒字に必要な来店数はどう計算する?
損益分岐点とは、利益がちょうど0円になる売上のことです。ネイルサロンでは、これを来店数に置き換えると、予約枠と比べやすくなります。
黒字に必要な来店数=月の固定費÷(客単価×(1−材料費率))
「客単価×(1−材料費率)」は、お客様1人から材料費を引いて残る額です。固定費をこの額で割ると、固定費をまかなうのに何人必要かが出ます。歩合給や決済手数料も売上に比例する店は、材料費率に足した「変動費率」で計算します。
計算の流れは次のとおりです(数字はすべて説明のための例で、統計や平均値ではありません)。
- 月の固定費を出す:例として、家賃・固定給・媒体の月額・オーナーの生活費などの合計を60万円とします。個人事業ならオーナーの生活費をここに入れて計算すると、「手元に残る」ための来店数になります。
- 1人あたりの残る額を出す:例として客単価7,000円、材料費率10%なら、7,000×(1−0.1)=6,300円です。
- 割る:600,000÷6,300=約95.2なので、黒字に必要な来店数は月96人です。
- 予約枠と比べる:例として席1つ・1日5枠・月24日営業なら、用意した枠は120枠です。96÷120で、稼働率80%が黒字の境目になります。
同じ例で、決済手数料と歩合を足して変動費率が20%になると、1人あたり5,600円、必要な来店数は約108人に増えます。境目の稼働率は90%です。予約枠の9割を埋めないと黒字にならない店は、少し暇な月があるだけで赤字になります。
利益を残すには、どの順番で直せばよい?
直す順番は、すぐに効いて、お客様やスタッフへの影響が小さいものからです。
- 固定費の点検:使っていない媒体の上位プラン、効果を測っていない広告、重複している予約システムやサブスクを止めます。契約の解約時期にもよりますが、早ければ来月から効きます。
- 稼働率:今ある席と人のまま、空いている枠を埋めます。売上が増えても固定費は増えません。
- 人件費の組み方:固定給と歩合の配分、シフトの組み方を見直します。スタッフの生活に関わるので、数字を確かめてから進めます。
- 単価:メニュー構成と価格を見直します。お客様の反応が読みにくいため、最後に手をつけます。
固定費の点検で何を見る?
費目表の固定費の行に、「この費用がなかったら売上はいくら減るか」を書き込みます。答えられない費用が、見直しの候補です。広告費は、新規1人を呼ぶのにいくらかかったかで見ます。家賃は簡単には動かせませんが、更新の時期と条件は書き出しておきます。
稼働率はどこから上げる?
稼働率は「施術した枠数÷用意した予約枠数」です。曜日・時間帯・担当者別に分けると、平日昼だけ空いている、特定のスタッフの枠だけ空いている、といった偏りが見えます。空いている枠の分だけ再来の案内や新規の集客を入れます。具体的な上げ方は、冒頭で紹介した売上側の記事の「順番①:再来率と稼働率はどう直す?」で扱っています。
人件費の組み方はどう考える?
人件費は、金額よりも「売上に対する割合」と「予約が少ない日の固定分」で見ます。予約が少ない日にもシフトが入っていれば、その日の人件費はそのまま固定費になります。
NBLの面談を担当する長尾亜矢は、2014年に開業し、2017年に2店舗目、2019年に3店舗目を出しました。2020年の出産を機に2店舗を事業売却して1店舗に戻したところ、再び大きな赤字になりました。暇な日でもスタッフの希望でシフトを入れる必要があり、スタッフが関心を持つのは店の売上より自分の給料で、それは当然のことでした。そこで、人件費を複数の店舗で分散できることが利益を残すカギだと気づき、店舗展開を再開しています。
人件費の割合の見方と組み方は人件費の割合の目安と見直し方、1店舗で続ける場合の上限の考え方は一人経営・1店舗経営の限界で扱っています。2店舗にした場合に人件費や利益がどう変わるかは、2店舗目シミュレーターで1店舗と2店舗の月の利益、損益分岐の稼働率、初期費用の回収月数を比べられます。
単価はいつ見直す?
固定費と稼働率と人件費を整えても、黒字に必要な来店数が予約枠に近いままなら、単価を見直します。J-Net21の業種別開業ガイドでは、ネイルサロンへ行くのをためらう理由の1位として「価格が高そうだから」(79.4%)が紹介されています。一律に値上げするより、ベース価格とアート・ケアの追加料金を分けて、お客様が選べる形にするほうが、新規の入口を狭めにくくなります。
一人で見直すか、誰かと一緒に見直すか?
費目表と来店数の計算は、自分で進められます。まず先月分を書き、割合の大きい費目の上位3つと、黒字の境目の稼働率を出してください。つまずきやすいのは、数字が出たあとに「どれから手をつけるか」「スタッフにどう伝えるか」を決める段階です。
LINEに登録すると、「利益が残る店の診断シート」を受け取れます。売上・来店数・人件費など11項目を入れると、月の利益の目安、予約枠の稼働率、売上に占める人件費、黒字に必要な来店数、新規1人あたりの広告費の5つと、最初に手を付ける1つが表示されます。計算はお使いの端末の中だけで行われます。
NBL(ネイルサロン経営者の学校)は、毎月の個別面談・動画・隔週のグループ勉強会を通じて、自店の数字に置き換えて経営を学ぶプログラムです。参加前の個別面談は約30分・Zoomで、長尾亜矢が一人で担当します。1期生の定員は8名です。
よくある質問
Q1. ネイルサロンの売上はあるのに利益が残らないのはなぜですか?
A. 売上から引かれる費目のどれかが、売上より先に増えていることが多いです。材料費・決済手数料・値引き・歩合・家賃・固定給・広告費などを、売上から1つずつ引いて残る額を書き出すと、どこで消えているかが分かります。
Q2. 帳簿では黒字なのに、通帳にお金が残らないのはなぜですか?
A. 借入金の元金の返済や、オーナー自身の生活費は、帳簿の経費には出てこないからです。日本政策金融公庫の創業の手引でも、返済の財源は「減価償却費+利益」とし、そこから元金の返済と、個人企業なら家計費を引いて収支を見る形になっています。
Q3. 黒字に必要な来店数はどう計算しますか?
A. 「月の固定費÷(客単価×(1−材料費率))」で出します。たとえば固定費60万円、客単価7,000円、材料費率10%という例なら、600,000÷6,300で約96人です。歩合や決済手数料も売上に比例するなら、材料費率に足して計算します。
Q4. 利益を残すには、何から直せばよいですか?
A. 固定費の点検、稼働率、人件費の組み方、単価の順です。固定費は早ければ来月から下げられ、稼働率は今ある枠と人で上げられます。人件費の組み方と単価は、お客様やスタッフへの影響が大きいので、数字を確かめてから手をつけます。
Q5. 赤字が続くとき、まず誰に相談すればよいですか?
A. 帳簿や税金、社会保険の扱いは税理士や社会保険労務士などの専門家に確認します。そのうえで、稼働率や人件費の組み方などの経営の打ち手は、自店の数字を書き出した表を持って相談すると話が早く進みます。
参照した一次資料
- 日本政策金融公庫「新たに美容業を始めるみなさまへ 創業の手引+(令和6年6月)」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/pdf/sougyou_tebiki_biyou2406.pdf
- J-Net21(中小企業基盤整備機構)「業種別開業ガイド ネイルサロン」 https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/service/05018.html
(2026年10月22日閲覧。統計の数値は調査時点のものです。最新の内容は各機関にご確認ください。)