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店舗展開

ネイルサロンの多店舗展開|1→2→3店舗で変わる仕事と整える条件

ネイルサロンの多店舗展開を、1→2→3店舗で変わるオーナーの仕事と、各段階で整える人・数字・仕組みで解説。人件費と本部機能を複数店舗で分け合う考え方を仮の数字で示し、向かない条件と自店チェック表も載せています。

公開日:|更新日:|執筆・編集:NBL経営ノート編集部(グローバルシフト株式会社)。一次資料にもとづき、サロンの状況に応じた判断材料を提供します。特定の結果を保証するものではありません。

ネイルサロンの多店舗展開は、店の数を増やすことではなく、オーナーの仕事を「施術」から「人と数字と仕組みを見ること」へ移していくことです。1店舗では、予約が少ない日もシフトを組む人件費が固定費のように重くのしかかり、利益が残りにくい構造があります。複数店舗になると、スタッフの融通やヘルプ、予約・採用・教育・広告といった本部の仕事を店舗間で分け合えるため、人件費と固定費を分散できます。ただし、それは店長と仕組みがあって初めて成り立ちます。この記事では、1→2→3店舗で変わるオーナーの仕事、各段階で整えるもの、人件費を分け合う考え方(仮の数字による計算例)、向かない条件、自店チェック表を順に示します。

この記事が向いている人:2店舗目を出した、または準備中で、その先の展開を考え始めた方。「店を増やすと本当に利益は残るのか」を仕組みで理解したい方。 向いていない人:まだ2店舗目を出すかどうかの段階の方は、先に2店舗目はいつ出すか・準備手順の記事と2店舗目が失敗する要因の記事をご覧ください。

ネイルサロンの多店舗展開とは、何が変わることなのか?

定義:ここでいう多店舗展開とは、オーナーが常に現場にいなくても、複数の店舗それぞれで予約と売上が立ち、店舗をまたいで人と仕事を分け合える状態をつくることです。

店が1つから2つ、3つと増えるとき、変わるのは売上の合計だけではありません。変わるのは、オーナーが1日の時間を何に使うかです。施術で売上をつくる人から、店長を育て、数字を見て、店舗間の人の配置を決める人へと役割が移ります。

中小機構J-Net21のビジネスQ&Aでは、多店舗展開の留意点として、資金調達を計画的に行うこと、既存店との距離(近ければ顧客の共食い、離れればスタッフの応援など運営が非効率)を考えること、新店には店長やスタッフが必要で、既存店のノウハウをマニュアル化して教育に使うことが挙げられています。どれも「オーナー個人の頑張り」ではなく「仕組み」の話です。

1→2→3店舗で、オーナーの仕事はどう変わるのか?

店舗数ごとに、オーナーの主な仕事と時間の使い方は次のように変わります。

段階 オーナーの主な仕事 時間の使い方の目安 つまずきやすい点
1店舗 施術・接客・予約管理・SNS・採用・会計をほぼ一人で担う 大半が施術。経営の仕事は営業後や休日 オーナーが休むと売上が止まる
2店舗 片方の店を任せ、もう片方で施術しながら両店の数字を見る 施術と管理が半々。行き来が増える どちらにいても片方が手薄になる
3店舗 店長に店を任せ、本部として予約・採用・教育・広告と数字を管理する 施術はごく一部か、入らない 店長がいない店にオーナーが張りつく

2店舗目は、オーナーが両店を行き来することで何とか回ってしまう場合があります。3店舗目からは、オーナーが現場に立つ前提では物理的に回りません。そのため、3店舗目を考える時点で「店長に任せて、自分は本部の仕事をする」形に移れているかが問われます。

各段階で整えるものは何か?(人・数字・仕組み)

段階ごとに整えるものを、人・数字・仕組みの3つに分けました。上の段階が整ってから次に進むのが基本です。

段階 人 数字 仕組み
1店舗→2店舗 オーナー指名を他のネイリストへ引き継ぐ。店長候補を一人決める 稼働率・指名比率・固定費と変動費を把握する。決算で利益を出す 施術・接客・予約のルールを書き出す
2店舗→3店舗 店長が自店の予約と人の判断を一人でできる。次の店長候補がいる 店舗別の損益を毎月出す。損益分岐点売上高を店舗ごとに知る ヘルプのルール、採用・教育・広告を本部でまとめて行う形
3店舗以降 店長どうしで情報を共有し、育成を店長が担う 本部の費用も含めた全店の利益を見る マニュアルと評価の基準を全店で共通にする

人:店長が「判断」までできるか

店長に任せる仕事は、施術の技術だけではありません。予約枠の管理、お客様対応の判断、売上と支出の報告、新人への指示までを、オーナー不在の日に一人でできるかが基準です。任せる基準の決め方は2店舗目の準備手順の記事にまとめています。

数字:店舗ごとに損益分岐点を知る

J-Net21の創業マニュアルでは、損益分岐点売上高を「利益がプラスでもマイナスでもない0(トントン)のときの売上高」と説明し、「損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費比率)」で求めるとしています。固定費の例として正社員の給与や店舗の家賃が挙げられています。多店舗では、この数字を全店合計だけでなく店舗ごとに出すことで、どの店が全体の利益を支え、どの店が足を引っ張っているかが見えます。

仕組み:マニュアルで「一定の水準」をそろえる

J-Net21のビジネスQ&Aは、一定レベルの業務や接客を保つにはマニュアルが効果的で、定型業務がこなせるようになったら少しずつ裁量の幅を広げる、という進め方を示しています。ネイルサロンでも、施術手順、カウンセリング、予約の受け方、クレーム時の対応を書き出すことが、店舗を増やす前提になります。

なぜ複数店舗だと人件費と固定費を分け合えるのか?

1店舗では「暇な日の人件費」が固定費のように効く

1店舗のサロンでは、予約が少ない平日でも、受付や安全面を考えて最低限の人数でシフトを組みます。お客様が少ない日も人件費は同じようにかかるため、人件費は売上に連動しない固定費に近い動きをします。J-Net21の損益分岐点のQ&Aでも、例題で販売員の人件費を「販売量が0でも発生する」固定費として扱っています。

さらに、人は「0.5人」単位では雇えません。仕事量が2.5人分でも、実際には3人分の人件費がかかります。この「余り」が、1店舗では利益を削り続けます。

複数店舗では「融通・ヘルプ・本部の共有」で余りを吸収できる

店舗が2つ以上あり、ヘルプに行ける距離であれば、予約の多い店へスタッフを回したり、店舗間で休みを調整したりできます。また、予約管理、求人、SNSや広告、新人教育といった仕事は、店舗ごとに行うより本部でまとめて行う方が手間を分け合えます。求人原稿や教育資料は、一度つくれば複数店舗で使えるからです。

計算例:仮の数字で考える

以下はすべて説明のための仮の数字です。実際の店舗のデータや業界平均ではありません。考え方をつかむために使ってください。

前提(仮の数字):スタッフ1人の月の人件費は30万円。1店舗の売上は月250万円。1店舗に必要な仕事量は2.5人分。

項目(仮の数字) 1店舗 2店舗(ヘルプあり) 3店舗(ヘルプあり)
必要な仕事量 2.5人分 5.0人分 7.5人分
実際に雇う人数 3人 5人 8人
人件費の合計 90万円 150万円 240万円
1店舗あたりの人件費 90万円 75万円 80万円
売上に対する人件費の割合 36% 30% 約32%

1店舗では0.5人分の余りがそのまま利益を削ります。2店舗で融通できれば、余りが消えて1店舗あたりの人件費が下がります。3店舗では再び0.5人分の余りが出ますが、1店舗のときより割合は小さくなります。

本部の仕事も同じように考えます。仮に、予約管理・求人・広告・教育に1店舗で月60時間かかるとします。2店舗をまとめて行えば合計90時間、3店舗なら120時間で済むとすると、1店舗あたりは60時間、45時間、40時間と減っていきます(いずれも仮の数字)。

ただし、この計算には前提があります。店舗間でヘルプが出せる距離であること、ヘルプのルールがあること、店長が各店を回していることです。J-Net21のビジネスQ&Aにあるとおり、店舗が離れていればスタッフの応援などの運営は非効率になります。また、家賃は店舗ごとにかかるため分け合えません。店長手当や移動の手間も増えます。自店の数字で2店舗目の収支を試算したい場合は、無料の計算ツール2店舗目シミュレーターも使えます。

多店舗化が向かないのは、どんな条件のときか?

複数店舗の効果は、条件がそろわないと出ません。次のどれかに当てはまる場合は、店を増やすより先に今の店を整える方が向いています。

  1. 売上の多くがオーナー指名:オーナーが新店に移ると既存店の売上が落ち、分け合う前に減ってしまいます。
  2. 店長候補がいない:本部の仕事に移れず、オーナーが現場に張りつき続けます。
  3. 店舗どうしが遠い:ヘルプが出せず、人件費の余りを吸収できません。
  4. 1店舗目の利益が出ていない:赤字の店を増やすと、赤字も増えます。日本政策金融公庫の美容業向け創業の手引では、事業開始後の運転資金として「半年程度の赤字補てん資金等」の準備を確認するよう示しています。新店でも同じ備えが必要です。
  5. 数字を店舗別に見ていない:どの店が利益を出しているか分からないまま、次の店を出すことになります。

J-Net21の人員計画の解説では、人に関わる費用は全体の大きな割合を占めるとし、作業時間や作業量を確かめて「無駄のない人員数を決めること」をポイントに挙げています。多店舗でも、ヘルプがあるからと人を積み上げすぎれば、分け合う効果は消えます。

自店は次の段階に進めるか?(自店チェック表)

空欄に自店の状況を書き込みます。「次へ進む目安」を満たしていない項目があれば、そこを先に整えます。

区分 確認項目 次へ進む目安 自店の状況
人 予約に占めるオーナー指名の比率 オーナーが施術に入らない週でも売上が維持できる
人 店長(候補)の有無 予約管理・対応判断・報告・新人指導を一人でできる人が各店にいる
人 次の店長候補 新店に店長を出しても、既存店に任せられる人が残る
数字 店舗別の損益 毎月、店舗ごとに売上・固定費・変動費・利益を出している
数字 損益分岐点売上高 店舗ごとに把握し、各店がそれを上回っている
数字 人件費の余り 暇な日に何人分の余りが出ているかを把握している
数字 赤字補てん資金 新店が軌道に乗るまでの資金を、既存店の利益に頼らず見込める
仕組み ヘルプのルール 誰が、いつ、どの店へ応援に行くかが決まっている
仕組み 本部の仕事 予約・採用・教育・広告を店舗ごとではなくまとめて行える
仕組み マニュアル 施術・接客・予約・クレーム対応が書き出されている
立地 店舗間の距離 ヘルプに行ける距離で、商圏が重なりすぎていない

判定の目安

多店舗展開を「経営として」学ぶには、何が必要か?

多店舗展開で利益が残るかどうかは、施術の技術ではなく、人の配置、店舗別の数字、本部の仕組みで決まります。どれも経営として学び、自店に当てはめて試すものです。一人で判定すると「うちのスタッフならヘルプできるはず」「店長はそのうち育つ」と甘くなりやすいため、相談相手を持つことも選択肢です。相談先の違いは相談先の類型比較で整理しています。

NBL(ネイルサロン経営者の学校)は、ネイルサロン経営者のための経営学習プログラムです。施術を教えるネイルスクールではありません。学び方は、毎月の個別面談、経営に関する動画の閲覧、隔週のグループ勉強会の3つが中心で、店舗展開のほか、スタッフ採用や広告の出し方も扱います。面談担当の長尾亜矢は直営5店舗+FC店舗を運営し、2店舗を売却して1店舗に戻した際に再び赤字を経験したのち、店舗展開を再開しました。財務のことは別の担当者が対応します。範囲・頻度・料金への包含は個別面談で確認してください。学び方の詳細はLPにもまとめています。

次の段階に進む前に体制を点検したい方には、LINEで「学び方」と「参加前の個別面談」についてご案内しています。参加前の個別面談は、契約前に自店の状況を整理し、NBLが合うかどうかを確かめるためのものです。参加後に毎月行う個別面談とは別のものです。上のチェック表を持参して話すこともできます。

よくある質問

Q1. ネイルサロンは何店舗から利益が残りやすくなりますか?

A. 店舗数だけでは決まりません。複数店舗で利益が残りやすくなるのは、スタッフの融通やヘルプ、予約・採用・教育・広告といった本部の仕事を店舗間で分け合えるときです。店長と仕組みがないまま店を増やすと、固定費だけが増えます。

Q2. 3店舗目は2店舗目と何が違いますか?

A. 2店舗目はオーナーが両店を行き来してもぎりぎり回ることがあります。3店舗目からは、オーナーが現場に立つ前提では回りません。店長に店を任せ、オーナーは数字と人を見る仕事に移る段階です。

Q3. 多店舗展開に向かないのはどんなサロンですか?

A. 売上の多くがオーナー指名である、店長候補がいない、店舗どうしが遠くヘルプが出せない、1店舗目の利益が出ていない、のいずれかに当てはまる店は、多店舗化の効果が出にくい状態です。

Q4. 店舗を増やせば人件費率は下がりますか?

A. 自動的には下がりません。店舗間でスタッフを融通できる距離と仕組みがあり、本部の仕事を共通化できたときに、人件費や固定費を分け合う効果が出ます。家賃のように店舗ごとにかかる費用は分け合えません。

Q5. 多店舗展開のタイミングは何で判断すればよいですか?

A. 今の店舗数で、オーナーが施術に入らない日でも各店の予約と売上が維持できているかで判断します。加えて、決算で利益が出ていること、新店が軌道に乗るまでの赤字補てん資金を見込めることを確かめます。

参照した一次資料

(2026年10月21日閲覧。各資料の内容は更新されることがあります。本文の計算例はすべて説明用の仮の数字です。最新の内容は各機関にご確認ください。)

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